腐蛆(ふそ)病は、細菌感染によって起こる蜜蜂の法定伝染病だ。死んだ幼虫や蛹(さなぎ)が腐るという共通の症状のため、まとめて腐蛆病と呼ばれているが、この病気にはアメリカ腐蛆病とヨーロッパ腐蛆病という全く異なる二つの病気が含まれる。

アメリカ腐蛆病は、1~2日齢の幼虫にアメリカ腐蛆病菌が感染することによって起こる。発症までには時間がかかり、蛹になるために幼虫の部屋(巣房)にふたがされた後に死亡することが多い。

死亡幼虫は菌が作る、たんぱく質分解酵素の働きで分解され、粘稠(ねんちょう)性で茶褐色の膠臭(こうしゅう)を発する腐蛆となる。また、巣房のふたはへこみ、小孔がみられることがある。

ヨーロッパ腐蛆病は、1~2日齢の幼虫にヨーロッパ腐蛆病菌が感染することによって起こる。発症はアメリカ腐蛆病より早く、巣房にふたが掛けられる前に死亡することが多い。死亡幼虫は、乳酸菌などの2次感染菌の影響で分解され、水っぽい、酸臭を発する腐蛆となる。

どちらの菌も人への感染はない。しかし、アメリカ腐蛆病が発生した場合、抵抗性の強い芽胞が周辺の土壌や巣に残るため、その後の飼養には注意を要する。

対策

海外では抗生物質による治療が行われることもあるが、日本で発生した場合、発生蜂群は焼却処分される。アメリカ腐蛆病の予防には、ミロサマイシンという抗生物質を含む飼料添加剤が利用できるが、蜂蜜に抗生物質が残留しないように用法・用量を守って使用する必要がある。
動物衛生研究部門 高松大輔

Paenibacillus larvae is a rod-shaped bacterium that causes American foul brood (AFB), a destructive disease of honey bee colonies. The origin of AFB is unknown, but it is found worldwide. Bees move spores around the hive and robber bees can assist in the transmission of spores between hives. Beekeepers may also spread the disease by moving equipment from contaminated hives to healthy ones.

This disease is on the list of diseases notifiable to the World Organisation for Animal Health (OIE) and is a notifiable pest according to DEFRA (DEFRA, 2011; FERA, 2013). The disease and pathogen are included in the Invasive Species Compendium because of the OIE listing.

細菌名 アメリカ腐蛆病菌
学名 Paenibacillus larvae
Ash et al. 1994
分類
Domain
Bacteria 真正細菌
Phylum
Firmicutes フィルミクテス門
Class
Bacilli バシラス綱
Order
Bacillales バシラス目
Family
Paenibacillaceae パエニバシラス科
Genus
Paenibacillus パエニバシラス属
Species
Paenibacillus larvae パエニバシラスラーヴァ
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